ソロ登山で遭難(道迷い)しない為に注意すべき事
- 2019.09.29
- 登山(2019年)

はじめに
今回は、ソロ登山をする上で、遭難しないために注意すべきポイントについて、お話ししたいと思います。遭難と言っても定義が広いので、道迷いに焦点を絞りたいと思います。
私は、10年ほど前からほぼソロで登山をしています。あまり危険な目にあったことはありませんが、少し危ないと思った事例や、日ごろ気を付けている事などを紹介したいと思います。
事例
(1)南アルプスの稜線で向かうべき方向が分からなくなる
南アルプスの西農鳥岳の頂上を踏んで大門沢の下降地点へ戻ってくる途中の話です。辺りは濃いガスに覆われていて視界が良くありませんでした。途中で靴紐がほどけたので、しゃがみ込んで解けた靴紐を結びなおしていました。靴紐を結び終えて頭を上げると、自分の行くべき方向が分からない???と言うか自信が持てない。道はしっかりついているのですが、稜線上は平たんで、ガスで目標物が見えない上に、来た方向も、これから向かうべき方向もガスの中に岩が点在した似たような風景なのです。
この時は、コンパスを持っていたので方向を確認して進むことが出来ました。そして、些細なことでも方向を見失う場合がある事と、コンパスが重要ツールであることを学びました。
(2)道が倒木で塞がれていて正規ルートを見失う
この件も南アルプスでの話ですが、北岳を目指して池山吊尾根ルートを登っている時の話です。途中に幾つかの大きな倒木があり完全に道が塞がれていました。木が大きすぎて、乗り越えて進むことが出来ない為、藪をかき分けて迂回して進むことにしました。しかし、進んでも正規ルートにぶつかりません。一旦、倒木があるところまで戻ろうとしましたが、倒木のある方向とは、違った方向に進んでしまっている様でなかなか来た場所にたどり着けません。
この時は、GPSで自分の進んできた軌跡を確認し、元の場所に戻ってから、倒木の先にある正規ルートにたどり着きました。
(3)進む先の道が崩落していてルートを見失う
この件は、東京都檜原村の御前山からの下山時の話です。バリエーションルートで麓まで下る計画でした。バリエーションルートと言っても所々にピンクテープがありルートを示しています。急斜面の枝尾根を下り、沢がある所まで下ってきました。すると、古びた登山道に合流し一安心。しかし、この登山道は、沢沿いの斜面を通っていて、少し進むと斜面が崩落し、道が無くなっています。降りてきた枝尾根を登り返す力もありませんし、日没までそれほど時間はありません。少し高巻きして崩落地点の向こうに行っても道が無い事から、道は崩落個所で折り返し沢へ下っていると判断し、意を決して沢までの急斜面を滑る様に下りました。沢に降り、目を凝らして辺りを見回すと、ルートを示すピンクのテープが見つかりホッとしたのを覚えています。無事に正規ルートへ戻る事ができました。
この時は、たまたま正規ルートに復帰することが出来ましたが、低山でも遭難があり得る事を学びました。登山を始めた頃の話で少し無謀な計画になっていますが、不確実な道を進むのであれば、最悪登り返す時間も考慮する必要があります。
道迷いが起こりやすい条件

以下の条件に当てはまる場合は、道迷いが起きやすいと考え、慎重に進むことにしています。
- 踏み後が不明瞭。
- ピンクテープなどのルートを示す目印が少ない。
- 地形がのっぺりとしていて、枝尾根が多い。
上記の条件に複数当てはまる場合は注意が必要です。特に初めて行く山であれば、何かしらの対策が必要だと思います。
また、踏み後が不明瞭でのっぺりとした山は、下山時に道迷いが発生することが多いようです。実際に山に入ってみると分かりますが、地図には表現されていない枝尾根が幾重にも分岐している為、気付かぬ内に正規ルートを外れがちです。
対策
GPSの携行

私の所持しているGPSは、簡易的な地図しか入っていない機種で、そのまま山に持ち込んでも、等高線や登山道の表示がない為、自分の居場所を確認することが出来ません。初めて行く山や、マニアックなルートを通る場合は、「ガーミン 3D」と言うソフトウエアでルートを作成し、GPSにアップロードしています。そして、山では、手動で作成したルートと自分のいる位置にずれが無い事を確認しています。そうすれば、計画したルートを進んでいることを確かめる事が出来ます。
但し、電子機器ですので故障する事を忘れてはいけません。
地図・コンパスの携行
縮尺が2万5千分の1の国土地理院の地図とコンパスがあれば、今いる場所を確認したり、行くべき方向を判断することが出来ます。しかし、地図と実際の距離感を掴むまでは、ある程度使いこなす必要があります。コンパスと地図の使い方は、日常で学習しておき、道迷いが発生しにくい山で実際に試すと良いと思います。
正規ルートなのか確かめながら進む
今いる場所が、正規ルートなのか怪しいと思ったら、まずは踏み跡や、ルートを示すピンクテープがないか、辺りを慎重に確認すべきだと思います。一般的な登山道であれば、ピンクもしくは赤いテープで登山ルート上の木の枝に印が付いています。そして、正規ルートだと言う自信がないのであれば、迷う前に来た道を引き返した方が良いです。
踏み跡が不明瞭で、ルートの印が無い登山道を登る場合は、時々振り返って、来た道を引き返す事が出来るか確認すると良いです。目印が少なく、引き返せる自信がない場合は、これ以上進まない方が良いでしょう。
そもそも、人は目標物の無い鬱蒼とした森の中では、方向感覚を失ってしまい、まっすぐ進むことすらできません。むやみやたらに、歩いても(特に地形に起伏や沢等の特長が無い場合)リングワンデリングと言って、微妙な体の歪みから進む方向が左右のどちらか一方に偏ることで、無意識に円形の軌道を進んでしまいます。登りでは、高い方向を目指すため、特殊な地形でない限りは、一度通った所に戻ってくることは無いと思いますが、人は目印が無いと正しい方向に進むことが困難である事は、安全に登山を続ける上で理解しておく必要があります。
おわりに
2018年では、昨今の登山ブームの過熱に伴い、遭難件数も2600件以上と10年前の3倍に上るそうです。
道迷いを防ぐには、あらかじめ道迷いのリスクがどのような点にあるのか理解する事と、自分が正規のルート上を進んでいるか時々確認する事(確認する術を持つ事)、ルートを外れている事が分かったら来た道を引き返す事が重要ではないかと思います。
この記事が安全登山の役に立てれば幸いです。
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